色を飛ばさないために

正月になると、山田洋次監督の寅さんシリーズを観に行っていました。それが出来なくなって、正月が少しさびしくなりました。

シリーズの何本かはどなたもご覧になっているかと思います。寅さんはいつも旅をしておりますから、地方の列車の向かい合わせになった箱席に寅さんがすわって、むかいに座った人物となにかしらかかわりができるというおなじみのシチュエーションです。さて、その時、車窓の景色はどんなふうであったか。窓の外には、その土地柄を映し出す景色があり、手前には、四角い寅さんの顔が大きく映し出されていました。

何気ないシーンでありますが、ここには撮影の高度なテクニックが使われているのです。

質問「友人の結婚式のビデオ撮影をすることになりました。我ながら、うまく撮れたなとよろこんでいたら、披露宴の最後に新郎新婦が金屏風の前で、列席してくださったお客様にお礼のお見送りをするシーンにきて、愕然。新郎新婦の顔が真っ黒になっていました。新しい門出に光り輝くべき顔がこれでは・・・一体何が起きたのでしょうか?」

HIGE「ビデオカメラをオートモードで撮ると、露出は中間値が選択されます。そのため、後ろにある金屏風と手前の男女の中間の露出を選択し、結果的に、金屏風は白っぽく色が飛んでしまい、手前の男女は顔が真っ黒に映ってしまうのです。

これを防ぐ方法は、まず、オートで新郎新婦の足元を撮ります。

その時点で、マニュアルに切り替えます。そして、露出を固定します。その後で、新郎新婦の顔を撮りますと、二人の顔はその未来のように、くっきりと輝くように撮れます。

そして、後ろの金屏風もやや白っぽくはありますが、金色に撮れるはずです。

冒頭の寅さんの車窓のシーン、普通のビデオカメラで撮った場合、後ろの景色は真っ白になるはずです。映画は、フィルムですが、普通に撮ったのでは、やはり、景色は見えません。あの時窓にはサングラスのようなフィルターが二重に貼られていたはずです。

ビデオカメラを撮る時は、揺れ、水平、そして、今回の露出。これが三大要素なのです。