【前編】AI人形浄瑠璃ロボットの映像制作をしました

AI人形浄瑠璃ロボットの映像制作をしました【前編】

先日、SusHi Tech Tokyo2026 展示用の「AI人形浄瑠璃ロボット」の映像制作を担当しました。

最初に「AI人形浄瑠璃ロボット」と聞いた時は、正直、「どういう研究なんだろう?」という印象でした。

AI。人形浄瑠璃。ロボット。

単語はわかるのですが、組み合わさるとなかなか想像がつかない。

ご担当者さまからお問い合わせフォームにご連絡をいただいたのが夜10時頃で、翌朝にはお電話する予定だったので、何も知らないまま話を聞くわけにもいかないなと思い、すぐにChatGPTでDeep Researchを回しました。

翌朝、読み上げ機能で内容を聞きながら研究概要を頭に入れていったんですが、そこで少しずつ見えてきたのが、この研究が単なるロボット開発ではないということでした。

研究者との最初の会話

ご担当の先生との最初の電話。

普段、僕が接することの多い企業担当者とは、また少し違う雰囲気の方でした。

必要なことを端的に伝える、研究者らしいコミュニケーション。

ただ、お話を伺っていくうちに、この研究テーマに対する熱意や探究心が強く伝わってきました。

僕は普段の映像制作でも、「相手が本当にやりたいことは何なのか」を掘り下げることを大事にしています。

質問を重ねながら、輪郭を引き出していく。

30分ほどの電話だったと思います。

その中で、この研究の見え方がずいぶんとクリアになりました。

人は、身体から感情を読んでいる?

この研究で面白かったのは、単純に「人形の動きをコピーする」という話ではなかったことです。

人形浄瑠璃の動きをモーションキャプチャーで取得し、AIが学習する。

ただ、そのまま完全再現するわけではない。

AIが学習し、解釈し、そこから身体表現としてアウトプットする。

つまり、単なるコピーではなく、“身体表現を理解しようとしている”研究なんですよね。

さらに興味深かったのが、この研究の目的です。

将来的には、ホームロボットや介護ロボットなどへの応用も視野に入っている。

ロボットが、身体表現によって人に安心感を与える。

そのための基礎研究として、伝統芸能の身体表現を分析している。

とても面白い着眼点だと思いました。

普通、ロボットって「効率化」「最適化」「高速化」みたいな方向に進むイメージがあると思います。

でも今回の研究で扱っているのは、

  • 重心移動
  • 沈み
  • 呼吸感
  • ためらい

みたいな、むしろ“人間っぽい非効率さ”なんですよね。

でも、人ってそういう部分から無意識に感情を読み取ってる。

それを研究している。

ここがかなり興味深かったです。

八王子車人形という身体表現

今回、研究協力として関わっているのが、八王子車人形 西川古柳座。

車人形は、「ろくろ車」と呼ばれる特殊な台車に座り、一人で人形を操る伝統芸能です。

今回撮影にご協力いただいた家元は、撮影時ももちろんすごかったのですが、さらに圧倒されたのはSusHi Tech Tokyo 会場で実演を見た時でした。

迫力がすごい。圧倒され、怖いとさえ思いました。

人形が演技しているんですが、同時に人形遣い自身も演技しているんです。

顔。呼吸。空気感。間。

全部が一体化している。

だから、見ていて途中から、「人形を見ている」のか、「人形遣いを見ている」のか、わからなくなってくる。

人形遣いと人形が完全に同期している感覚。

独特でした。

感情は“顔”だけじゃない

映像制作者としてこの制作を通して感じたことがあります。

人って、顔の表情だけで感情を読んでるわけじゃないんですよね。

ほんの少しの重心移動。沈み込み。首の傾き。動き出す前の間。

そういう、わずかな身体の変化から、僕たちは無意識に感情を受け取っている。

映像制作にもかなり通じる話だと思いました。

今の動画って、テンポの速いものも多いです。ショート動画なんかは特にそうですよね。

それはそれで、現代の面白さだと思います。

ただ、人間が本来感じ取っている感情って、もっと微細な部分にも宿っている。

今回の研究を見ながら、そんなことを改めて考えさせられました。

AI人形浄瑠璃ロボットは、どこまで動くのか

実は、撮影当日まで、AI人形浄瑠璃ロボットがどの程度の身体表現ができるのか、僕自身も完全には把握できていませんでした。

だから今回、最初から細かくガチガチに演出を固定するというより、

「こういう世界観の映像にしたい」

というコンセプトを先に作り、そこへ現時点で可能な身体表現を当て込んでいく、という組み立て方をしています。

そして撮影当日。

まず最初に思ったのは、

「ちゃんと動いてくれて良かった」

でした(笑)

研究開発中のロボットって、当日ちょっと不調、みたいなことも普通にあるんですよね。

なので、まずは安心しました。

しかも、想像以上によく動く。

そこで初めて、「じゃあこれをどう撮るか」という次の段階に入れました。

着物を着た瞬間、空気が変わった

撮影では、最初は骨組み状態のロボットも撮影しました。

メカニズムが見える状態ですね。

それはそれで、技術的にはかなり面白い。

ただ、最後に着物を着せて動かした瞬間、空気が変わったんです。

本当に一気に“人形浄瑠璃”になった。

もちろん、まだロボットらしい動きはあります。

でも、着物の揺れや布の流れが加わることで、急に生命感が出てくる。

特に、シンプルなお辞儀の動き。

本当に美しかった。

息を飲みました。

後編へ

今回の映像では、CGや説明テロップを多用した“説明動画”にはしませんでした。

むしろ、

「身体表現がAIへ継承される瞬間」

そのものを、映像として感じてもらう方向に振っています。

なぜそうしたのか。

そして、AI人形浄瑠璃ロボットの映像制作を通して、僕自身が「人間らしさ」について何を考えたのか。

後編で書こうと思います。

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