英会話 Part 12 Pleaseは魔法の言葉

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最近アメリカから日本にきたばかりのJ先生は命令形の授業で、 “Please” is the magic word. と教えてくれました。彼は大学を出たばかりの青年ですが、子供の頃大好きだったおばあちゃんにおやつをねだる時、彼女はpleaseを言い忘れる孫たちにいつもこう言って注意を与えていたのです。

この夏上映された「ニューヨークの恋人」、メグ・ライアン扮する広告エージェンシーに勤務するケイトは、125年前に生きていたイギリス人貴族のレオポルドと不思議な恋におちます。

この青年貴族をヒュー・ジャックマンがとてもカッコ良く演じているのですが、映画の冒頭で、パーティーに紛れ込んだ不審な男を彼が追いかけるシーンでこのPleaseを印象的に使ったのに気がつきました。 彼の手を再三に渡って振り払い、逃走しようとする不審人物の背に向かって、彼は 「Stop ,Please!」と叫びます。

明らかに彼はどんな時にも、命令形の後にはPleaseを、という教育環境に育ったということがわかりました。これが、渋いクリントイーストウッド扮するダーティーハリーなら、 Hey, you! Stop!Stop,Hey!と言いつつ、やおら愛用のマグナムを取り出すに違いないのです。

というわけで、命令形にはPleaseをつけることと、肝に銘じたはずのスタッフWはひと月程すぎた頃にまたしても恥ずかしい間違いおかしてしまったのでした。

8月のある日、国立博物館に日本の国宝を見に行ったスタッフWは、昼のランチをとろうと、博物館の中にあるレストラン精養軒に入りました。何しろここは、ハヤシライスの本家でありましたから、当然ここでハヤシライスを食べずして、国宝何をか我に語りかけんや、とわけのわからないことを考えながらウエーターの案内にしたがってテーブルにつきました。

すると、テーブルの向かいにはアメリカ人とおぼしきうら若い青年が座っておりました。 スタッフWはラッキーと内心ウキウキしながら、表面は小さな品の良い声であくまでも冷静沈着に Sorry…….と席につきました。 しばらくして青年がオーダーしたチキンピラフが運ばれました。彼はそれをナント箸で、食べ始めたのです。次に私のオーダーしたハヤシライスが運ばれてきた時、それにスプーンがセットされていないことに気がつき、この時になってやっと彼が箸で食べている理由がわかったのです。

スプーンとフォークは隣のテーブルの端にハンカチをかけたカゴの中にはいっていました。上に覆ってあったハンカチを私がめくり、スプーンが彼の視野に入った途端、彼の目は「スプーン、あるじゃないの!」という感じでまんまるくなっていきました。 そこでまよわず、私は Please! と言ってしまいました。しかし、彼は2度3度と頭を横に振ると非常に熱心に最後の一粒まで箸を使ってピラフを食べ終えたのでした。

もうお気づきの方もいると思います。このような状況では

How about a spoon or a fork?

あるいは Would you like a spoon? と聞くのがベストだと後日先生から教わりました。私のPleaseは誤解されたろうかという心配が頂点に達し、次に引き潮のようにそれが過ぎてゆくと、単に変わり者の若者であっただけだと思いこむ、またしても懲りないスタッフWであります。